鍾馗さんの起源と京都での面白い風習

鍾馗さんは、中国起源の宗教である道教に登場する神様です。

その姿は、必ず長い髭を蓄え、古代中国の官僚の衣服を着て剣を持ち、大きな目で睨みつけています。

この神様の由来は諸説ありますが、実在の人物という話が伝わっています。

唐の6代玄宗皇帝が瘧(現在でいうマラリア)に罹り寝込んでいた時、夢を見ました。

夢で宮殿の中を小鬼が走り回っていましたが、やがて大きな鬼が現れて小鬼を捕え食べてしまいました。

皇帝が大鬼に正体を尋ねると、その鬼は自分が鍾馗という人物で、初代皇帝高祖の時代に科挙に落第し、それを恥じて命を絶った。

だが、高祖は自分を手厚く葬ってくれ、その恩に報いるために来たと答えました。

夢から覚めた玄宗皇帝は病気が治っているのに気づき、夢に出てきた姿を著名な画家に描かせました。

実際、この玄宗皇帝の時代以降、中国ではその絵の模写を魔除けとして新年に玄関先に貼る風習が広まり、時代が下るにつれて端午の節句等にも貼られるようになりました。

京都の町家では、所々に鍾馗さんの像が屋根の上に置かれています。

昔、京都三条のとある薬屋が家を建てた時、大きな鬼瓦を屋根に置いた所、向かいの家で病人が出ました。

向かいの家は、鬼瓦が跳ね返した邪気が入ってきたのが原因と考え、鬼を退治できる鍾馗さんの像を置くと病気が治ったという伝説があります。

鬼瓦を持つ寺社が多く通りも狭い京都では、互いの邪気を入れないようにするのに流行っていきました。

実は、人形の置き方にも特徴があります。

向かいの家が既に飾っている場合は、互いの視線が合わないよう少しずらして置くようにしています。